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姿勢のハナシ

理想の歩きを考える

「正しい歩き方」を目指すな「正しい立ち方」だけ目指せ

歩く動作を嚙み砕いていくと3つのシーンに分けられる

1地面にエネルギーを加える
→出した足が接地した瞬間(初期接地:IC)

2地面からエネルギーを受け取る
→接地した足と体が垂直になる瞬間(立脚中期:MSt)

3受け取ったエネルギーで体を前に運ぶ
→接地した足裏が地面から離れる瞬間(離床期:TSt)

大きく分けてこの3つが歩行動作の中でエネルギーの移動が起こる瞬間であり
非効率的な歩きをしている人はこの3つの過程のいずれかでエラーが起こっている。
ただし、歩行の中の一瞬を切り取っているので実際には連続する運動の中の一瞬の出来事であり、
どのフェーズにおいても前後関係があり互いに影響しあっていることを知っていて欲しい。

まず、前提として歩行のエネルギー源は「床反力」と「倒立振り子運動」だ。


床反力は文字通り地面から受ける反力を指し、一般に地面を蹴るなどというように表現されている。
僕らが静止して立っていられるのは立位時に体重分のエネルギーの跳ね返りを常に受けていてその力が釣り合っているからである。
この反力が体を前に進めていくエネルギー源になる。


もう1つは倒立振り子と呼ばれる運動モデル。
これは上半身の重さが前方に倒れ、傾くことで位置エネルギーを生み出し推進力となる。
これは一般にはあまり知られていない。

倒立振り子運動

この2つのエネルギーを効率よく利用することでより長くより楽に、故障のリスクを減らす歩行につながる。
これを可能にするのは適切な身体重心の決定である。
たくさんのクライアントの歩きを見てきて既出の1,2,3のシーンにおいて重心の乱れが生まれていることが多い。

ではそれぞれのシーンにおける理想の状態と悪い例を挙げる。

1地面にエネルギーを加える
→出した足が接地した瞬間(初期接地:IC)

<理想の状態>
接地の際に足底圧中心(体重がかかっている中心点)が土踏まずの頂点から基節骨(母指球)の間にある。(できるだけ早くかかとから移動する)

<悪い例>
かかと重心→かかとへの圧力が強い、またはかかとに圧力がかかっている時間が長い

一般的にかかと重心が起こりやすい背景として
・かかとから着く無駄な動作(つま先を上げ、スネに力が入る)
・大股歩き(リーチアウト・・・自分の体の幅より大きく足が前に出る)
・シューズの形状
・足首の歪み

が挙げられる。

2地面からエネルギーを受け取る
→接地した足と体が垂直になる瞬間(立脚中期:MSt)

<理想の状態>
立脚中期において背骨は生理的弯曲を描き、解剖学的良肢位がとれている。中殿筋の筋活動量が大きい。

<悪い例>
猫背・反り腰・股関節内旋・膝屈曲などのアライメント異常

繰り返しになるが我々は立っているだけで地面から反力を受けている。
この2のシーンでエラーが起こっている人はおそらく歩行以外の瞬間でも同じようなエラーが起こっている可能性が高い。
よってそのような人は肩こりや腰痛などの骨格系の不調が慢性的に起こりやすい。

3受け取ったエネルギーで体を前に運ぶ
→接地した足裏が地面から離れる瞬間(離床期:TSt)

<理想の状態>
胸郭(上半身)が初動で前方移動を開始し、後ろ足ではMP関節(指の付け根)に荷重をしっかりと感じられている。

<悪い例>
太もも(下半身)が初動モーションを起こす。

位置エネルギーを効率的に使う倒立振り子モデルを遂行するには
「上半身の重さが前に倒れこみ、それを下半身が支える」ポジションを作る必要がある。
多くの日本人は「下半身が先行し上半身がそれについてくる」歩き方をしている人が多い。
その背景には日本人の生まれながらの骨格、欧米様式の生活の習慣化、シューズ(アウトソールの変化)が挙げられる。

これらすべてを含め、理想的な歩きを作るためのポイントは「0(ゼロ)を作る」こと。

1、2、3の流れの前段階として「地面からの反力をロスなくもらう立ち方」を作る。
骨格が歪むことなく、全身は脱力していて適度な張力を保ちながら立つ。この状態を0(ゼロ)とする。どれだけ適切に地面にエネルギーを与えても反力を受け取る準備ができていなければ良い歩きは実践できない。

歩けば歩くほど基本である「立ち方」が重要だと気づく。
自分の頭、胸、お尻、膝、足首がどこにあって、どう動くのか。その感覚が研ぎ澄まされていけばいくほど疲れにくくなり、楽に長い距離を歩ける。また他人からは体が軽そうとか、スタイルが良い、などと言われることが多くなる。

歩きを変えることは究極の姿勢改善と言えるかもしれない。

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